NTT、低遅延トランスポートと精密バイラテラル制御でロボット遠隔操作する実証実験

NTTは11月10日、ソニーと、NTTの次世代ネットワーク「IOWN APN(アイオン・オールフォトニクス・ネットワーク、APN)」を活用した低遅延トランスポート技術に、ソニーが開発する精密バイラテラル制御技術を接続し、ロボットアームの精密遠隔操作を行う実証実験を共同で実施したと発表した。

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実証実験の概要

実証では、NTTが、「IOWN APN」のテスト用環境と、非圧縮映像伝送技術、ネットワーク経由でメモリ上のデータを直接転送する「RDMA」のアクセラレーション技術を提供。APNの接続試験とネットワーク条件の評価実験を実施。

一方、ソニーは、RDMAを使った通信機能を持つ精密バイラテラル制御システム、空間再現ディスプレイ「ELF-SR2」と、3D映像の撮像・処理技術、操作支援の先端位置や奥行きを示すUI重畳や仮想力場による力の誘導技術を提供し、動作評価を行った。

バイラテラル制御技術は、操作者の動作に応じて遠隔地のロボットアームを連動できるロボット制御技術。ロボットアーム先端の位置と三次元方向の力の変化を一定の倍率で操作者側にフィードバックが可能なほか、力精度1グラム重(ニュートン換算で0.0098N)で、1mm未満の位置精度を実現する。対象物を高精度で繊細に扱うことが求められる、医療や微細な工作、科学的研究などの分野への応用が期待されている。

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実験の構成図

具体的には、APNテスト用環境に低遅延トランスポート技術を用意し、APNの両端にソニーの精密バイラテラル制御システムを接続して実施。視覚情報については、3D映像をNTTの非圧縮映像伝送技術でAPNにダイレクトに送出し、ソニーの空間再現ディスプレイで操作者側に提示した。また、力覚情報含む制御情報は、精密バイラテラル制御システムと、RDMAアクセラレーション技術を接続し、APNを介したメモリ間通信で行った。

実証の結果、APNを介した約120kmの長距離実証実験で、1ミリセカンド以下の低遅延でエンドツーエンドの安定動作を確認した。また、RDMAを使ったアプリケーション側の通信処理は、APNを介した場合でも10マイクロセカンド以下の低揺らぎで安定動作ができた。

2社は、実証実験の結果から、APNと低遅延トランスポート技術が伝送の遅延や揺らぎの課題を解決し、近距離を前提としていた精密バイラテラル制御をより離れた地点間に拡張できる可能性が示されたとしている。今後は、具体的なユースケースを考慮した実証実験を実施し、精密な遠隔操作の適用範囲の拡大を目指す。