
ブラックベリーの子会社のQNXは6月4日、ロボティクス導入の最新調査結果を発表した。調査は日本を含む世界13カ国の医療、製造、自動車、重機業界の経営幹部1000人を対象に実施し日本の回答者は100人。調査結果からは、日本企業がロボット導入で抱える課題や特徴が明らかになった。

調査によると、現在、ロボットを利用している日本企業の割合は41%(グローバル平均50%)だった。今後導入の予定がある企業は24%(同47%)で、グローバル平均よりも低いレベルにとどまっている。ロボット利用が最も進んでいる用途は自動化が54%(同50%)、生産51%(同46%)、サポート32%(同36%)、高リスク業務27%(同28%)となった。
ロボット導入の背景は「労働力不足」
ロボットを導入する日本企業のうち54%が、「労働力不足」を導入の主要因に挙げた。これはグローバル平均(27%)の2倍にあたり、少子高齢化を背景とした深刻な人材不足が、導入を後押ししていることがうかがえる。また、日本企業の回答では「安全性の向上」(49%)、「労働力の規模拡大と柔軟性の向上」(44%)、「技術の進歩」(41%)も導入を促す要因に挙げられた。
最大の課題は「初期コスト」
調査からは、日本企業では「初期コストの高さ」が、ロボット導入の最大の障壁となっていることが分かった。日本では68%が課題に挙げ、グローバル平均の47%を大きく上回った。加えて「メンテナンスとダウンタイム」「既存システムとの統合」なども懸念材料になっており、コスト全般が導入の足かせとなっている。
企業規模による導入率の差も顕著で、従業員が1000人以上の大企業では導入率が78%であるのに対し、2~9人の小規模企業はわずか7%にとどまった。
ロボット運用の準備と信頼性も課題

ロボットを「運用できる準備が整っている」と回答した日本企業は42%にとどまり、グローバル平均(69%)を大きく下回った。中国では94%が「準備できている」と回答しており、日中間で大きな差がある。
トレーニング面では、日本企業のうち、問題解決、監視、最適化などの高度なスキル研修を提供している割合はわずか7%。グローバル平均の27%、中国の52%を大きく下回っている。

信頼性の面でも、日本企業で「ロボットを完全に信頼している」と回答したのは10%にとどまり、「全く信頼していない」は23%。グローバル平均(13%、8%)と比べ、懐疑的な傾向が強い。
業界別では導入状況に大きな開き
業界別にみると、製造業(79%)、自動車業界(74%)ではロボット導入が進んでいる一方で、医療業界(23%)、物流業界(16%)では導入率が低い。これはグローバル平均(医療40%、物流48%)を大きく下回る水準で、日本のロボティクス普及で産業間の格差があることを浮き彫りにしている。
今回、調査に回答した世界の経営幹部は、今後10年間で従業員の約20%がロボットで自動化されると見込んでおり、日本も19.7%と同水準だった。一方、中国は32.1%と先進的な姿勢を示している。
調査はQNXの委託で、調査会社のオープンポールが2025年3月5日~14日で実施。医療、製造、自動車、重機業界の意思決定者が対象で、参加者はオプトイン方式で調査に同意し、内容に応じた報酬を受けた。