工場や倉庫で効率的な物品の搬送や運搬に活用されているAMR(自律移動ロボット)。AMRは働き方改革の加速を背景に、今後も導入する企業は増えることが見込まれる。一方で、AMRの利便性向上にはロボットが稼働するためのアルゴリズムの高度化が不可欠だ。AMRのアルゴリズムは、どんな進化をしているのか。ロボットバンク(東京・新宿区)のAMR技術から解説する。
ロボットバンクは、AMR「StarShip-Robot」を開発するロボットベンチャー。「StarShip-Robot」は、自律的なルート設計とナビゲーションの機能を搭載した、200Kgまで積載に対応する。
同社によると自社のAMRに搭載する「多センサーデータを融合した位置決めによる精度向上」「特徴距離に基づく干渉回避」「リアルタイム位置補正」と、3つのアルゴリズムが現在のAMRの特長になっているという。
具体的には、「多センサーデータを融合した位置決めによる精度向上」は、ナビゲーション、位置情報、障害回避などの主要な機能を、単一のセンサーに依存するのではなく、複数のセンサーからのデータを統合して動作を制御するためのアルゴリズム。レーザー、深度センサーに加えて、IMU(慣性航法装置)、車輪速度計、RGBカメラ、超音波センサーなどとアルゴリズムを利用することで、位置決めの精度を高め、AMRの安全で自律的な稼働を可能にした。
「特徴距離に基づく干渉回避」は、強い光線などの特殊な状況下でも、レーザーセンサーが、その干渉を受けないようにするため、光の特徴を捉えるアルゴリズム。ロボットバンクでは、このアルゴリズムを独自開発し、カルマンフィルターなどのデータ処理アルゴリズム、ディープラーニング(深層学習)を組み合わせることで、深層学習モデルを構築。このモデルで光の干渉をフィルタリングし、環境の正確な認識を行っている。
「リアルタイム位置補正」では、人為的なロボットの位置変更や電源オフ後のロボットの位置変更などで、決めた位置にズレが生じた場合でも位置を補正できるアルゴリズム。実際の機能では、機械学習の特徴点マッチングやLightFlowなどの手法とアルゴリズムを活用し、迅速で正確な位置補正を行う。
現在、AMRは、この3つのアルゴリズムによって、高精度で安定した動作を実現しているという。産業分野での自動化技術は実用化のスピードが加速している。それに伴い、AMRも今後、新たなアルゴリズムが開発され、より一層の進展が見込まれる。