パナソニック ホールディングス(HD)は6月1日、人やほかのロボットが共存する環境下でもロボットの効率的な走行経路を計画できるAI(人工知能)技術を開発したと発表した。
同社によると、労働力不足で自律走行ロボットを使用するケースで、ビル内の通路など、自律走行ロボット同士がすれ違えないほどの狭い通路が含まれる例は少なく、多くの場合、通路には通行人や別のシステムの制御下にある多種・複数のロボットが存在する場合も多いという。
こうした環境下で、自律走行ロボットが移動障害物を回避する際に減速や一時停止を繰り返すと、ロボットが通路の通過にかかる時間に、確率的に変動する遅延が発生していた。
一方で、この遅延の確率分布が事前に分かっていることは少なく、実際は不明か、限られた事前情報しか得られない場合が多く、ロボットの走行中に観測された遅延を基に次の計画を作成していたとしている。
また、この課題に対し、「MAPF(Multi-agent Path Finding)」という、グリッド状のグラフ上で複数ロボットが衝突しない経路を作成する問題設定が研究・応用されてきたが、従来の手法では遅延の確率分布を正確にモデル化できていることが前提となっており、通路にいる人やロボットの数が変動する、実際の現場に適用することは困難だった。
そこで、パナソニックHDでは、ロボットが特定の経路を走行する際の遅延をパラメータが未知なガンマ分布に従うものと定義。走行中に得られる遅延の観測値を使って確率分布のパラメータをベイズ推論で遅延が観測されるごとに更新することで、推定したパラメータに基づき最適な走行経路計画を作成する手法を開発。
実際に、シミュレーション実験を行った結果、従来法よりもロボット同士の鉢合わせを約半分に減らし、目的地までの移動時間が短い走行経路を計画できることを実証した。