東日本電信電話(NTT東日本)は10月16日、埼玉県所沢市、森林解析システムの開発・提供を行う京都大学発のスタートアップ、DeepForest Technologies(ディープフォレストテクノロジーズ)と、ドローンの撮影画像とAI(人工知能)解析ソフトを活用した、ミズナラなどが集団的に枯損する「ナラ枯れ」の把握効率化の実証実験を所沢市で開始したと発表した。
「ナラ枯れ」は、カシノナガキクイムシ(カシナガ)が媒介するナラ菌によって、ミズナラなどが集団的に枯損する事象。2022年度の全国のナラ枯れ被害量は、前年度比で99%の約15.1万立方メートルに上る。枯死した樹木を立木のまま放置すると、周辺の別の木に被害が広がったり、倒木などの危険が発生したりするため、早期の対処が必要で、課題となっている。
3社は実証で、ドローンに搭載したデジタルカメラで調査対象森林の撮影。その後、ドローン撮影画像をディープフォレストテクノロジーズが開発した、ドローンで撮影した画像データから樹木単位で森林情報を解析するシステム「DF Scanner」で解析。実地調査結果とドローン把握データを突合してナラ枯れの状況把握を検証する。調査は所沢市の三ケ島二丁目里山保全地域を対象に行う。
所沢市は、実証実験実施区域の指定、実証実施区域のナラ枯れ木に関する実査データの提供を担当。ディープフォレストテクノロジーズは、ドローンを使用し実証実験実施区域の空撮、空撮した画像を「DF Scanner」で分析し、ナラ枯れ樹木の検知を実施する。NTT東日本では、所沢市のナラ枯れ把握の課題抽出、課題解決に向けた最適ソリューションの提案と実証実施のコーディネートを行う。
所沢市では、広大な森林緑地内に職員が足を運び、枯死木調査を行っているが、業務量など課題があり、効率がよく有用性のある調査方法を検討した。NTT東日本は、所沢市から、この課題について相談を受け、以前から森林調査ソリューションで連携するディープフォレストテクノロジーズの技術を活用した課題解決を提案。3者が連携して実証を行うことにした。NTT東によると、このような汎用的な市販ソフトウエアを使った枯死木調査の実証実験は国内初という。
NTT東は、取り組みの実用有効性が確認された場合、市販ソフトウエアと一般的なドローンで撮影した画像で再現性のあるソリューションの提供が可能になり、ほかの自治体でもソリューションを導入することで、森林管理の職員とコストの大幅な削減と、森林保全活動を迅速で確実に推進できると見込んでいる。