インプレスのシンクタンク部門のインプレス総合研究所は3月14日、国内ドローンビジネス市場の調査について発表した。それによると、2023年度の国内ドローンビジネスの市場規模は、3854億円になる見通し。
調査は、ドローン関連ビジネスを展開する企業やキーマンなど40社以上を取材し、市場動向、ビジネス動向、行政、法律や規制、課題、展望などドローン市場を多角的に分析した。
ドローンビジネスの市場規模は、23年度は2022年度の3111億円から、743億円の増加(前年度比23.9%増)。2024年度には前年度比21.5%増の4684億円に拡大し、2028年度には9054億円になる見込み。年間平均成長率(2023年度~2028年度)の換算では、年18.6%増加になるとしている。
調査では、ドローンビジネスの市場を機体とサービス、周辺サービスの3つで検証。2023年度の市場規模が最も大きかったのはサービス市場で、前年度比27.6%増の2025億円。次いで機体市場が前年度比21.2%増の1051億円、周辺サービス市場が前年度比18.5%増の778億円となった。
2028年度では、サービス市場が5154億円(2023年度~2028年度の年間平均成長率20.6%増)と最も成長し、機体市場が2281億円(同年間平均成長率16.8%増)、周辺サービス市場が1619億円(同年間平均成長率15.8%増)になると予測する。
個別の市場については、機体市場は、近年20~50kg程度の重量物を運ぶための機体が登場し、限られたエリア内でモノを移動させる運搬でのドローンの利用が広がっていると分析。
土木・建築現場の資機材や農産物、農業資材のように、人が運ぶには重たい荷物をドローンが運べるため、建設機械や農業機械のように、現場の生産性向上の手段としてドローンの利用が広がるとしている。また、2024年度は、レベル4飛行(有人地帯における補助者なし目視外飛行)に欠かせない第一種型式認証に加え、利用者が操縦者技能証明との組み合わせて許可と承認を省略できる第二種型式認証のドローンが増加するとみている。
サービス市場では、特に点検、土木・建築、農業などの分野でドローンの社会実装が着実に進んでいると指摘。
2023年度の点検分野では、橋梁、一般住宅、大規模建造物などの点検用途での商用化・実用化が一層進む一方、オフィスビルや商業施設の天井裏や下水道の管渠、ボイラーやダクトの内部など狭小空間でのドローン活用の認知が広まり、普及し始めているという。
水上や水中といったフィールドで活躍するドローンの利用も活発化しており、海洋構造物やダム、上下水道、農業水利施設の管路といった設備を対象にした点検を中心に利用が広がっていくとしている。
農業分野は、ドローンによる農薬散布が定着しつつある一方で、画像解析やリモートセンシングといった精密農業では普及が進まず、分野全体では市場拡大が鈍化しているという。
物流分野では、昨年度から引き続き、全国で実証実験を始めとドローン物流の取り組みが数多く行われているものの、商用化した企業は一部にとどまり、市場はまだほとんど立ち上がっていないとしながら、「レベル3.5飛行」制度の新設が行われたことが後押しとなり、2025年度以降に市場が本格的に立ち上がっていくとしている。
そのほかのサービス分野の中では、エンタテイメント用途での活用が昨年度に引き続いて伸びていることに加え、数百から数千のドローンを群制御し、機体のライトで夜空に文字や図形、アニメーションを描くドローンショーは全国各地で行われており、今後は広告媒体の1つとして注目が集まるとみている。
周辺サービス市場については、無人航空機操縦者技能証明制度の開始に伴い、スクール事業が活発化。また、ドローンの産業利用が進むにつれ、バッテリーなどの消耗品や定期的なメンテナンス、業務環境に即した保険のバリエーションが増加し、機体市場の拡大に合わせて成長していくと予想している。