藤田医科大学病院、手術支援ロボットで乳頭乳輪温存乳房摘出術を実施

藤田医科大学病院、手術支援ロボットで乳頭乳輪温存乳房摘出術を実施

藤田医科大学病院(愛知・豊明市)は7月5日、同院の乳腺外科が、米インテュイティブサージカルの手術支援ロボット「ダビンチSPサージカルシステム(ダビンチSP)」を使用した乳頭乳輪温存乳房摘出術を施行したと発表した。ダビンチSPによる同手術は、国内で初という。

今回の手術では、脇の下を3㎝ほど切開してダビンチSPのカメラ(内視鏡)や専用鉗子(かんし)を挿入し、乳頭と乳輪を残したままでがん病巣と乳腺をすべて摘出した。摘出後は、大胸筋と小胸筋の間に「ティッシュ・エキスパンダー」と呼ばれる皮膚拡張器を挿入した。

「ティッシュ・エキスパンダー」には、少量の生理食塩水を注入し、2~4週間に1回、約半年かけてその量を増やしながら、少しずつ皮膚をのばしていくことで、左右バランスの良い自然な乳房を再建。切開創が目立たないことに加え、乳頭乳輪は元のままで、さらに皮膚拡張器を挿入することで多少の胸のふくらみを感じられるため、患者にとって乳房の喪失感が非常に少なくなるという。約半年後、両乳房のバランスが整ってきたらティッシュ・エキスパンダーを手術で取り出し、そこにシリコン型のインプラントを留置することで、再建の工程が終了する。

施術は、先端ロボット・内視鏡手術学の宇山一朗教授、乳腺外科の喜島祐子教授、形成外科の井上義一准教授が領域横断外科チームとなり実施。2024年4月に1例目、6月に2例目を行っている。

喜島教授は、「ダビンチSPを使ったことで、切開創が小さいことに加え、直視下の手術に比べ患者さんの回復が早いと感じる。乳がんは若くして発症することも多く、安全・確実にがんを取り切ることはもちろん、整容性も大きな課題。乳腺外科の領域ではロボット支援手術はほとんど普及していないが、整容性と根治性に優れたダビンチSPによる術式を確立し、保険収載の道筋をつけることで患者さんの精神的負担の軽減やQOL向上に寄与していきたい」と話している。

藤田医科大学病院は、学内にインテュイティブサージカルの「ダビンチ」、メディカロイドの「hinotori(ヒノトリ)」、メドトロニックの「Hugo(ヒューゴ)」のトレーニングセンターを開設。先端ロボット・内視鏡手術学の宇山一朗教授らが全国の外科医を指導するとともに、産学連携で新しい術式の開発などにも取り組んでいる。同院ではこうした環境を生かし、乳腺外科でも患者の体の負担が少ないロボット支援手術の導入を進めていくとしている。