東芝、ローカル5Gと電波マップ活用で移動ロボット群のリアルタイム制御に成功

東芝は11月30日、東芝インフラシステムズと、電波マップに基づいてロボットの移動経路を制御する技術を開発し、ローカル5Gを活用したサーバー集約型技術で移動ロボット群のリアルタイム制御に成功したと発表した。

今回の取り組みでは、ロボット本体に必要最小限の運ぶ機能のみを搭載し、ロボットの頭脳にあたる機能をサーバーで集約制御するシステムを開発。システムの実証を行い、12台のロボットのリアルタイム制御に成功した。

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自動搬送システムのイメージ<従来の自律走行型(左)とサーバー集約型>

東芝によると、サーバー集約型技術は、電波の遅延や干渉で制御信号がロボットまで到達せず、ロボットが停止する問題があった。今回、低遅延特性・低ゆらぎ特性を持つローカル5Gを活用することで解決した。ローカル5Gを利用したことで、ロボット1台当たりの低コスト化と消費電力の低減、充電頻度の抑制による稼働率向上が見込めるという。

また、すでに開発している協調搬送技術を応用し、同じくローカル5Gを活用してサーバー集約型にしたことで、荷物の大きさ・重さにかかわらず、複数台の単一種類、サイズのロボットで搬送を可能にした。

東芝では、サーバー集約型技術と共に、電波マップに基づいてロボットの移動経路を制御する技術も開発した。ロボット群の電波マップ予測に基づいた動的経路制御は世界初という。

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電波マップでロボットの走行経路を動的に制御する技術実証の様子

具体的には、ロボットが走行経路上の電波受信強度を逐次モニタリングして、ロボット本体に搭載されている通信端末からサーバーに送信することで、サーバーが走行経路上の電波状況を電波マップとして生成。電波マップは、ロボット群からの電波受信強度情報で逐次アップデートされ、常に最新の状態に保たれる。

一方、サーバーは電波マップの変化から走行経路上の電波受信強度を予測し、ロボットの経路を選択する。これにより、ロボット群は常時、受信強度が十分にある経路を停止することなく走行できる。電波マップは、ロボット本体に搭載されている既存の通信端末機能を活用するため、新たな設備を追加することなく生成が行える。

物流倉庫や工場などでは荷物の搬入出で、絶えず物理的環境が変化し、障害物の有無によって電波環境が変動する。そこで東芝と東芝インフラシステムズは、ロボットが移動中にモニタリングしたローカル5Gの電波状況をサーバー側でマップにする方法を考案。電波状況の強弱に応じてロボットの走行経路を動的に制御する技術を開発した。

また、実証では、12台のロボットで検証したが、ロボットの台数に合わせた拡張性のあるシステム構成にすることで、100台以上のロボットが稼働する中・大規模の物流倉庫や工場などに適用が可能。

加えて、ロボット100台の場合で、サーバー集約型の自動搬送システムを導入すれば、中・大規模の物流倉庫や工場などで、自動搬送システムの導入コストを約10%低減するとともに、ロボット本体の機能を絞ることで消費電力を約14%カットし、稼働率を約16%向上させることが見込めるとしている。

今回の技術開発は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)が委託する「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の一環で実施した。

東芝と東芝インフラシステムズは今後、2025年の事業化を目指し、物流倉庫や工場などでの実証を進める。一方、NEDOは、今後もポスト5Gに対応する情報通信システムの中核となる技術を開発することで、技術を活用した情報通信システムの実現と製造基盤の強化を目指す。