J商エレ、ドローン搭載可能な小型ミリ波レーダーで建築物外壁内部の欠陥検出の実験

ドローンを活用した非破壊検査

JFE商事エレクトロニクス(J商エレ)は12月7日、大阪大学と、ドローンに搭載可能な小型ミリ波レーダー技術を使用し、非接触・非破壊で建造物外壁内部欠陥を検出する実験に成功したと発表した。

J商エレでは、以前から交流のあった大阪大学と協力し、物質に対する透過能力を持つマイクロ波とミリ波を使った、新たな点検方法の開発プロジェクトを始動。2021年に第1号機を開発し、煙突内壁のライニング材の肉厚を非接触・非破壊で透視に成功。今回、レーダー部分の技術改良し、建築物外壁の内部欠陥の直接可視化を実現した。

具体的には、第1号機から「重量」「感度」「測定時間」の3点を改善した。

「重量」は、第1号機で1300gだったミリ波レーダー部の重量を、技術改良で435gまで軽量化。前回の実験では大型ドローンでなければ対応できなかった機能を、小型ドローンで可能にした。

「感度」では、大型ドローンで外壁に近接させた場合、ドローン自身が発生する風によって安定した飛行が困難だったが、小型ドローンにしたことで、大型ドローンよりも必要とする揚力が小さくて済み、ミリ波レーダーのアンテナ部を壁面から10cm~30cm程度まで近づけることができた。そのため、内部欠陥の検出を、より高感度で行えるようになった。
「測定時間」については、第1号機では測定箇所1点あたり数秒かかっていた測定時間を、1000分の1以下の1ミリ秒で検出可能に改良した。一般に空中のドローンは静止状態でも微小に揺らぐが、数ミリ秒であれば、この揺らぎよりも十分に短い時間のため、より精密な測定が可能になった。

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ドローンを活用した非破壊検査のイメージ図

今回の実験で使用した、ミリ波レーダー技術は、光通信技術を活用したシステムで、電波の周波数差分を確認することで外壁内部の欠陥位置を把握する。

今回、4GHz~40GHzの周波数範囲を高速で変化させる技術を新たに開発し、1点あたり1ミリ秒以下でレーダー照射したポイントの欠陥情報を取得可能にしたほか、ドローンのペイロード(搭載機器)は、光電変換器、レーダー回路、送受信用アンテナだけにすることで大幅な軽量化を図った。また、光信号の発生や信号処理の制御機器は地上に設置し、ドローンとは軽量の光ファイバーケーブルと低周波電気信号ケーブルでつなぐ形式を採用することで機能の実現につなげた。

今後は、ミリ波レーダーを搭載したドローンやロボットを建築物に対して2次元平面で広域走査するための技術開発と様々な構造物やインフラ設備の診断への実利用化を進めていく考え。

J商エレによると、現在、建設業界では、全体的な労働人口の減少や、技術職の高齢化・引退による技術伝承・調査人員の不足などが慢性的な課題の1つなっているという。そして、このような環境を受け、ドローンを活用した点検は効率と安全性から市場のニーズが高く、現在の数百億円規模から、2027年には1000億円規模以上の成長が見込まれるとしている。