富士通は6月26日、防災インフラ管理用の電気通信システム保守点検などのケーネス(東京・港区)と、国土交通省が保有する通信用鉄塔の点検業務で、ドローンとAI(人工知能)を利用する画像解析を活用した点検技術の実証実験を、2023年10月から2024年3月まで実施したと発表した。
実証実験では、ドローンに搭載した高解像度カメラで通信用鉄塔の外観を撮影。その後、富士通のAIを使用した画像解析技術で、ドローン画像からさびの箇所を抽出し、建設電気技術協会が定める点検要領規定の基準に沿って劣化度を4つのレベルに区分した。
鉄塔は本柱、腹材、二次部材に分類し、部材ごとの劣化度を示し、鉄塔全体の劣化度を評価できるようにした。その結果、通常の目視による点検と遜色なく、判定できていることを確認した。
また、インフラ点検記録を管理し維持管理を支援する富士通の「維持管理ソリューション」を活用し、点検結果を地図上にマッピングするとともに、3Dモデル上にさび検知結果を連携し管理することで、効率的な状況把握ができることも確かめた。
富士通は、AIの画像解析技術を活用した通信用鉄塔のさび検知解析、プロトタイプ開発、3Dデータを活用したインフラ管理の適用検証、ケーネスは、ドローンを使った通信用鉄塔撮影、解析作業、従来点検手法との比較評価と点検報告書作成を担当した。
2社によると、国交省が保有する通信用の鉄塔は、平時に加え、災害時の通信手段を確保するための重要設備として、全国に約1000基が設置されている。しかし、鉄塔の多くが建設から数十年経過し、老朽化の対策が急務なことに加え、設置場所に応じて個々に設計されているため点検の効率化が求められているという。
また、通常、鉄塔の点検は、作業員がロープなどでぶら下がりながら、ボルトのゆるみ、さびや亀裂の状態などを目視で判別する高所作業が主となっており、労働人口減少に伴う高所技術者の担い手不足だけではなく、安全管理面でも点検業務の改善が課題としている。今回の実証は、こうした課題解決で、高所での危険を伴う点検業務の負担軽減を目的に、鉄塔の劣化度判定でドローンとAIの有用性を検証した。
2社は、実証の結果、ドローンとAIで従来の目視点検のみでは困難だった、鉄塔全体の劣化度の定量的な評価が実現した。今後は、これらのデータを活用することで、将来的な劣化進行予測も可能になるとしている。